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職人だましい

職人だましい_e0023517_145486.jpgどこかに出かけると、必ず地元の本屋をめぐるのが習慣になっている。最近はローカル雑誌が豊富なので、めくるだけでも楽しい。でも当然地元情報がメインなので、よほどのことがない限り買って帰ることはないのだが。

そんな中で、目についた雑誌があった。「Clubism」。女優・黒谷友香の印象的な表情と、シンプルで力強い表紙に、最初は「新しい雑誌が創刊されたのかなあ」と思った。だったら東京で買えばいいや荷物になるしと思ったんだが、どうにも気になって帰り際に空港の本屋で手にとったら、リニューアルしたばかりの金沢ローカル誌だった。

ページをめくると、最初に「もっと雑誌に恋したい。」というタイトルの発行人・林さんのメッセージ。創刊号に編集長がコメントを寄せるケースはよくあるが、林さんのコメントは雑誌づくりに関わって30年以上になる彼の遍歴を手短に語りながら、文章はこう続いていた。

「正直、雑誌を出してよかったことなど、ほとんどありません。なにしろ小さな街です。ほんとうのことを書けばうらまれるし、ほんとうのことをいえば、たちまち阻外されてしまいます。名と顔を多少は知られるようになったのと比例して、どんどん人間との関係が希薄になって、ひとりのときは、もう泣きたいくらいに孤独です。
 どこに行けばいいのかさえわかっていれば、ぼくはいつだって、この仕事をやめてしまっていたことでしょう。」

作り手の、思いがけない告白だった。

小さな街では噂はすぐ広がり、ストレートな物言いは人から疎まれる。でも、それでもやめられないのが雑誌職人の性かもしれない。新しい風が吹いた時の肌ざわりを想像しながら、街を走る。金沢で格闘する作り手の思いにふれ、「ああこの街にもこういう人がいるんだ」となんだか嬉しくなった。そして、恥ずかしくなるほど青くさいストレートな言葉なのに、激しくシンクロしている自分にちょっと驚いた。

金沢ではお麩の老舗・不室屋で職人さんを取材した。古いものと、新しいもの、どっちも職人で、どっちもいい。ひとことで言えば職人に弱いって、それだけの話。
by akiedayumi | 2006-09-29 02:25 | 北陸

「ここ」と「どこか」をさまよいながら、デジカメ片手につぶやき続けて17年目。山口→大阪→東京→アメリカ→東京→NY→東京→離島とさすらいライター人生爆走中。2020年4月より毎日更新トライ中。あげなくてもよかったんじゃないか写真も多いかと思いますが、気にしないでください。


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