2006年 09月 29日
職人だましい
どこかに出かけると、必ず地元の本屋をめぐるのが習慣になっている。最近はローカル雑誌が豊富なので、めくるだけでも楽しい。でも当然地元情報がメインなので、よほどのことがない限り買って帰ることはないのだが。そんな中で、目についた雑誌があった。「Clubism」。女優・黒谷友香の印象的な表情と、シンプルで力強い表紙に、最初は「新しい雑誌が創刊されたのかなあ」と思った。だったら東京で買えばいいや荷物になるしと思ったんだが、どうにも気になって帰り際に空港の本屋で手にとったら、リニューアルしたばかりの金沢ローカル誌だった。
ページをめくると、最初に「もっと雑誌に恋したい。」というタイトルの発行人・林さんのメッセージ。創刊号に編集長がコメントを寄せるケースはよくあるが、林さんのコメントは雑誌づくりに関わって30年以上になる彼の遍歴を手短に語りながら、文章はこう続いていた。
「正直、雑誌を出してよかったことなど、ほとんどありません。なにしろ小さな街です。ほんとうのことを書けばうらまれるし、ほんとうのことをいえば、たちまち阻外されてしまいます。名と顔を多少は知られるようになったのと比例して、どんどん人間との関係が希薄になって、ひとりのときは、もう泣きたいくらいに孤独です。
どこに行けばいいのかさえわかっていれば、ぼくはいつだって、この仕事をやめてしまっていたことでしょう。」
作り手の、思いがけない告白だった。
小さな街では噂はすぐ広がり、ストレートな物言いは人から疎まれる。でも、それでもやめられないのが雑誌職人の性かもしれない。新しい風が吹いた時の肌ざわりを想像しながら、街を走る。金沢で格闘する作り手の思いにふれ、「ああこの街にもこういう人がいるんだ」となんだか嬉しくなった。そして、恥ずかしくなるほど青くさいストレートな言葉なのに、激しくシンクロしている自分にちょっと驚いた。
金沢ではお麩の老舗・不室屋で職人さんを取材した。古いものと、新しいもの、どっちも職人で、どっちもいい。ひとことで言えば職人に弱いって、それだけの話。
by akiedayumi
| 2006-09-29 02:25
| 北陸

