カンナンボーシ・イズ・カミング

えー、写真と短いコラムでつぶやいているこの「つぶデジ」ですが、
昨年からは島と東京と行き来するので精一杯。
その先の旅に出る機会がめっきり減っているため、
なかなか面白い写真を撮る機会がなく、しばらく更新が滞りそうな気配です。

一方、島暮らしも半年を過ぎて、ぼちぼち書きたいことがたまってきました。
近々、新島ネタを別の場所にまとめる予定。
その準備も兼ねて、しばらくテキスト中心のエントリーになりますが
しばしの間おつきあいくださいませ<(_ _)>

***

さて。
本日は全国的に「最強寒波」が吹き荒れておりますが、
午後8時時点の新島の気温は0℃。
そこに激しい西風がびゅーびゅー吹いている影響で、
iphoneの天気アプリによれば体感気温は-6℃。
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ちなみに同時刻の東京の気温は1℃、体感温度は-2℃。
東京から160km南の新島のほうが寒いっていうね!
新島の観光情報でよく「常春の島」などと表現されていますけど
あれやめたほうがいいと思いますよ。常春どころかけっこう極寒ですよ(-_-;)


今日はひときわ厳しい暴風で、立っているのもやっとのありさま。

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でも島民は口をそろえてこう言うのです。


「しょうがねえ。今日はカンナンボーシだからよ」
「おーよ、カンナンボーシよ。早く帰らねえと」


そう。
本日1月24日は新島では「カンナンボーシの日」なのです。


友人S「え? カンナムスタイル?」


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サイじゃねーよ



カンナンボーシは、正式には「海難法師」と書きます。
伊豆諸島には海難法師の伝説があり、いわれには諸説あるようですが、
私が見聞きした範囲をまとめると、以下のような話になります。


むかしむかし、まだ時代が江戸だった頃、
伊豆諸島の島民たちは厳しい年貢の取り立てに苦しんでいた。
無慈悲な悪代官に憎しみを募らせた島民たちは
代官が年貢の取り立てに来れないよう
あえて海が荒れる日に出航するよう代官に進言。

その結果、代官を乗せた船は海難事故に遭い、
海の底へと沈んだのだという…。


他にも島民がわざと船が沈むように細工したとか、
船が沈んだのは伊豆大島沖だとか、利島と新島の間だとか、
神津島には代官の首が打ち上がったとか
伝説についてはいろいろ枝葉があるようで
いずれくわしく調べたいと思っていますが、

いずれにしても「海に沈んだ(沈めた)代官」という忌むべき逸話は
やがて「海難法師(カンナンボーシ)」という祟り神に姿を変え、
年に一度、海が荒れる日の夜に海から上がって島内を歩き回り、
カンナンボーシと出会った者には災いがふりかかる…
と恐れられるようになったというのです。


カンナンボーシがやってくるのは、毎年1月24日。
カンナンボーシの日は、夕方までにトベラやノビルなど、
魔物が嫌う匂いの強い植物を玄関先に挿して、魔除けにします。

そして日が落ちる前に全ての用事を済ませ、
外に出ずにおとなしく家で過ごすのが基本。
カンナンボーシは光を頼りに近づいてくるので
見つからないよう灯りを消して早く寝るか、
灯りが外に漏れないように雨戸を閉めるのです。

昔はトイレ(肥溜め)が屋外にある家が多かったため、
当時はあらかじめ肥溜めの樽をきれいに洗っておいて
玄関先に置いて屋内で用を足せるようにしていたとか。
いやはや大イベントだ!

カンナンボーシが海から上がってくるのは、深夜0時。
「その人」が来ると、それまで吹いていた暴風がピタリと凪ぐといいます。
全ての音が消えた、深い夜。
島民はただ息を殺して「その人」が去るのを待つのです。

代々カンナンボーシを祀っている島内のとある一家では
今でも深夜0時になるとカンナンボーシの儀式を執り行うとか。
その儀式は一子相伝で、受け継がれた人以外は一切の詳細を知りません。
白装束で浜に出て身を清めるという噂があるそうですが
何しろ外に出ちゃいけないので、何をどうやるのか全ては闇の中…。

海難法師の伝説自体、本当に起きたことなのか定かでないようですが
この季節は海が荒れやすいため、海難事故を避けるためだとか
今ほど休日がなかった時代に、休みを増やすためだとか
「早く寝ないとカンナンボーシに食われるぞ!」などと言って
子供たちの聞き分けをよくさせるなど、
現代まで受け継がれてきた背景にはさまざまな理由がありそうです。

山口のわが故郷でいうところの「ゴンゴチー」みたいなもんですかね。
(ゴンゴチーについては、機会があればお話しします)
とにかく「カンナンボーシの日はイイ子にしておとなしく過ごす」という風習は
21世紀の今でも新島でしっかり受け継がれているのでありました。

というわけで、風速10m以上の暴風が吹き荒れる本日1月24日。
トベラの枝を取りにいって、
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扉に挿しました。

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21世紀ですよ、お客さん! 世界は広いね!


ただいま夜11時半、まだまだ風は強いまま。
これから本当に風はやむのかしら。

でもさっきからネットがなかなかつながらないのは
「カンナンボーシだからね」
今夜はお酒がなぜかすすむんですけど
「カンナンボーシだけにね」

そんなわけで、カンナンボーシがそろそろ来るので
今宵は早めに電気を消します。
もしも無事だったら、明日お会いしましょう。
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by akiedayumi | 2016-01-24 23:55 | 都民で島民で村民です。 | Comments(2)
Commented by ママりん at 2016-01-25 10:17 x
おはようございます。

寒中お見舞い申し上げます。今年も宜しく。

昨日は海難法師と会いませんでしたか?怖い話ですよね。真夜中には風は止んだんでしょうか?気になるところです。

伊豆七島は昔から色々と伝説がある地域ですね。島々で異なる言い伝えが沢山有ると思いますよ。

私が住んでる浦安は今では都会と近いリゾート地域と認識されていますが。昭和40年代まで陸路がない陸の孤島と呼ばれていた地域なんですよ。

昔からその場所で漁業を主にを営み庄屋さえ無かった地域なんですよ。それぐらい不便な地域だったみたいです。なので江戸時代からの?閉鎖社会の名残が今でもあります。方言も訛りも、ありますが火曜日には妊婦は病院から退院して戻ってはいけないと今でも東京から浦安にお嫁に来た人は姑に言われるそうです。なので火曜日が退院日の場合は延ばしてもらうか一日早く退院します。禁忌の名残が垣間見れます。そういうのって面白いですよね。
Commented by akiedayumi at 2016-01-26 16:03
>>ママりんさま
こんにちは!お久しぶりです♪今年もよろしくです〜。

ええとですね、結局風はぼーぼー吹いたままでした(笑)カンナンボーシも浜につけなかったかも?
それにしても、浦安がそんな閉ざされた地域だったとは初耳です。今からは考えられないですねえ。
妊婦さんが火曜に退院してはいけないって、どういういわれなんでしょうね。気になります。
首都圏でも都心をちょっと離れると、意外とこうした昔ながらの風習って残っていますよね。
こういう話に出会うと、日本はなかなか面白いなあと思います♪


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